大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪地方裁判所 昭和53年(わ)2776号 判決

主文

被告人両名を免訴する。

理由

一被告人両名及び分離前の相被告人A(以下単にAという。)に対する本件公訴事実は別紙一記載のとおりであるが、刑法一五七条一項、一五八条一項において、公正証書原本不実記載罪及び同行使罪の法定刑は、いずれも五年以下の懲役又は千円以下の罰金(罰金等臨時措置法により二〇万円以下の罰金)と定められているので、刑事訴訟法二五一条、二五〇条四号により本件の公訴時効はいずれも五年を経過することによつて完成するところ、本件公訴提起(以下「本件起訴」という。)は、昭和五三年六月二八日になされたものであるので、本件起訴の日には、本件公訴事実第一の犯行日と記載されている昭和四七年一〇月六日からも、同第二の犯行日と記載されている同月一一日からも、すでに五年が経過していたことが明らかである。ただ、右の各日が公訴時効の進行が開始する犯罪行為が終つた時に当るのかどうかについては、検察官は、偽造にかかる運転免許証を携帯して自動車を運転した場合の偽造公文書行使罪が継続犯であることを論拠として、本件公訴事実第二のうちの不実公正証書原本行使罪は、不実の登記簿の備付けの状態が存続する限り犯罪行為の終了しない継続犯であるから、現在なお犯罪行為が継続しており、本件起訴の日までに五年の時効期間が経過していたとする余地はないと主張している(ちなみに、検察官のいう不実公正証書原本行使罪は継続犯であるとの見解によつても、本件公訴事実第一のうちの不実公正証書原本行使罪については、表示登記の原本表題部の所有者欄の所有者の記載は、不動産登記法一〇三条により、はじめてする所有権の登記がなされた時に朱抹されることとなつているから、本件公訴事実第二の保存登記のなされた昭和四七年一〇月一一日には、表示登記によつてなされた不実部分が朱抹されているはずであるので、遅くともこの日には犯罪行為が終了していたこととなり、この日から本件起訴の日までには五年が経過していることが明らかなため、本件公訴事実第一のうちの不実公正証書原本行使罪については、検察官が継続犯の主張をする利益がないので、これについてはその主張から除いたものと思われる。)。

そこで、不実公正証書原本行使が、不実の登記簿の備付けによつて行われる場合には、その不実の登記簿の備付けられている限り犯罪行為の続く継続犯であるかどうかであるが、自動車を運転する際に偽造にかかる運転免許証を携帯しているに止まる場合には、偽造公文書行使罪を構成しない(最高裁判所大法廷昭和四四年六月一八日判決、刑集二三巻七号九五〇頁参照)ので、検察官が先に挙げた論拠はその前提を欠くことが明らかであるけれども、不実の登記簿の備付けられている限り違法状態が存続していることは否めないので、これが継続犯であるのか、いわゆる状態犯であるのかを検討する必要がある。それでは継続犯とは何かについて考えてみると、継続犯とは、法益の侵害がある程度時間的に継続することが予想される場合に、それが犯罪の構成要件の内容としてそのまま取り入れられている犯罪をいい、一般に継続犯とされるものには、その犯罪の性質上既遂に達するまでにある程度の時間法益侵害の状態が続くことが必要とされる場合(例えば、一瞬時の身体拘束では逮捕監禁罪は成立しない。)、既遂後の法益侵害が相当重大で既遂時の法益侵害に対する評価だけではその全体を評価し尽せない場合(例えば、逮捕監禁罪のような身体拘束を法益侵害とする場合。)真正不作為犯のように刻々構成要件的行為が継続して行われているとみられる場合(例えば、不退去罪のような場合。)などがあるが、不実公正証書原本行使罪は右のいずれの場合にも当らないと考えられるので、同罪が継続犯であると解することはできない。

結局、不実公正証書原本行使罪が不実の登記簿の備付けによつて行われる場合においても、その備付けによつて即時犯罪行為の終了する即成犯と解するのが相当であり、本件公訴事実第一、第二の各犯罪行為が終つた時は、右公訴事実記載の犯行日である昭和四七年一〇月六日と同月一一日であると認められるので、本件起訴の日には、本件公訴事実第一、第二のいずれについても、その犯罪行為の終つた時から五年が経過していたこととなる。

二しかしながら、〈証拠〉によると、被告人両名及び共犯のA、Bについて、大阪地方裁判所に対し、昭和五〇年一二月二六日別紙二記載のとおりの公訴事実(以下「旧公訴事実」という。)で公訴提起(以下「旧起訴」という。)がなされ、これについては、昭和五一年一一月一八日被告人両名及びA、Bのいずれについても公訴棄却の判決がなされ、右判決は被告人Tについては同年一二月九日に、他の三名については同月三日に、それぞれ確定したことが認められ、刑事訴訟法二五四条一項によると、公訴時効は当該事件について公訴の提起がなされた時から公訴棄却の裁判が確定した時までその進行を停止する旨定められており、本件起訴にかかる各犯罪行為の終つた時から本件起訴の日までの各期間から、旧起訴の日の翌日からその起訴に対する判決確定の最も遅い被告人Tについての確定の日(同法二五四条二項による。)の前日までの期間をそれぞれ差引くと、いずれも五年に至らないことになるので、旧起訴によつて、本件公訴事実記載の各事実について、公訴時訴が停止していたかどうかをみてみる必要がある。

そこで、刑事訴訟法二五四条一項の法意について検討をすると、同条項によつて公訴時効が進行を停止するためには、公訴の提起は原則として無効であつてもさしつかえなく、管轄違又は公訴棄却の裁判が終了する場合にも公訴時効は停止すると解せられるけれども、この点については例外がないわけではなく、公訴提起が不存在と目される程度の重大な瑕疵のある場合には公訴時効の進行は停止しないと解するのが相当である。  ところで、旧起訴に対して、前記確定判決は、訴因不特定を理由として公訴棄却しているので、訴因不特定の起訴について公訴提起が不存在と目される程度の重大な瑕疵とは何かを考えてみると、同法二五四条一項によつて公訴時効停止の効力の及ぶ客観的範囲については、学説上議論があるところであるけれども、これを最も広く解する説でも、起訴された事実と公訴事実を同一・単一にする範囲内にしか及ばないというのであり、当裁判所もまた右の範囲内にしか公訴時効停止の効力は及ばないものと解するので、訴因不特定の起訴であつても、それだけで直ちに公訴の提起が不存在と目される程度の重大な疵瑕があるとはいえないが、少くとも公訴時効停止の効力の及ぶ客観的範囲を確定するためには、他の公訴事実と区別できる程度には起訴の対象となつた事実が特定していることが必要であり(この点もし公訴時効停止の効力を起訴された可能性のあるいくつかの事実のすべてに及ぶとすれば、被告人の不利益は著しいことになる。)、この特定を欠く場合には公訴提起が不存在と目される程度の重大な瑕疵があるといわなければならない。

従つて、本件公訴事実記載の各事実について旧起訴によつて公訴時効が停止していたというためには、旧公訴事実が訴因不特定ではあつても、それが起訴の対象としようとした事実が他の公訴事実と区別できる程度に特定していたことと、本件公訴事実記載の各事実と旧公訴事実記載の事実とが公訴事実を同一・単一にするものであることが必要である。

三そこで、本件公訴事実と旧公訴事実とを比較対照しながら、旧公訴事実の特定の程度及び公訴事実の同一・単一の如何について検討することとする。

まず、本件公訴事実は、第一が、被告人両名がA、Bと共謀して(以下全て同じ。)、大阪市西成区梅通三丁目八番地の一、同番地の三所在の鉄筋コンクリート造陸屋根三階建共同住宅店舗車庫(以下「本件建物」という。)の表示登記について公正証書原本不実記載をしその行使をしたという事実であり、第二が本件建物の保存登記について公正証書原本不実記載をしその行使をしたという事実であるところ、旧公訴事実は、本件建物の登記に関する公正証書原本不実記載とその行使とを内容としようとするものである点で、本件公訴事実と共通するところがあるといいうるけれども、旧公訴事実を検討してみると、その中の「(本件建物につき)所有権保存登記を了して、同建物を金借の担保に供しようと企て」、「所有権保存登記を求める申請書に添付して」、「もつて不正な方法により所有権保存登記を申請し」及び「よつて(中略)不実の保存登記をなさしめた上、即時同所にこれを備えつけさせて行使した」旨の部分の各記載からみれば、本件公訴事実第二の事実を起訴しようとしたもののように思われるが、さらにその内容をくわしくみると、犯行方法としては本件建物の保存登記をなすには不必要な事項が詳細に記載されており、かつその犯行方法では保存登記をなすことが法律上不可能であり、むしろ、表示登記をなすに必要な方法であることが明白である(本件公訴事実と比較すると、犯行の日も表示登記のものと同一である。)。してみると、旧公訴事実においては、検察官は表示登記と保存登記の区別を十分認識せず、従つてその申請手続についても理解が十分でないまま、漠然と旧公訴事実のような記載をした疑いが強いのであつて、このままでは旧起訴が本件公訴事実のうちの第一事実を起訴したものか、第二事実を起訴したものか不明であるというほかはない。なお、前記判決書によると、検察官は旧起訴の裁判当時旧公訴事実について、表示登記に対する公正証書原本不実記載、同行使を起訴したものであると釈明していたことが窺われるが、前叙のように旧公訴事実記載内容の不備の程度が著しいことに照らすと、右釈明のみによつて旧起訴が本件公訴事実の第一事実を起訴したものであつたと認めることもできない。この点、検察官は、当裁判所では、旧公訴事実は、表示登記、保存登記の両方について公正証書原本不実記載罪と同行使罪の起訴をしたものであると主張するが、旧公訴事実の記載内容、構成自体からみても、また前述のように旧公訴事実について検察官が表示登記に関する右各罪を起訴したものであると釈明していたことからみても、右主張のように解することはできない(前記確定判決も、旧公訴事実が表示登記、保存登記のどちらについて公正証書原本不実記載罪及び同行使罪の起訴をしたのか不明であることを第一の理由として、旧公訴事実は「全体として訴因の記載が補正の許される余地のないほどに不明確で、罪となるべき事実の特定を欠く」として公訴棄却している。)。

このように、旧公訴事実は、本件公訴事実の第一事実、第二事実のいずれを起訴したものか不明であるし、もとよりその両方を起訴したものと認めることもできないので、右両事実が併合罪の関係に立つのであれば公訴事実を同一・単一にしないこととなるため、旧公訴事実は何を起訴の対象としたのか他の公訴事実と区別できる程度に特定しないこととなる(従つて、旧起訴に公訴時効停止の効力はない。)が、右両事実が牽連犯の関係にあるときは、公訴事実を同一・単一にすることとなり、併合罪の関係に立つ場合と異なり、直ちに他の公訴事実と区別できないとはいえないと考えられる。

そこで、右の罪数関係について検討するに、一般にいかなる場合に牽連犯関係を認めるべきかについて、最高裁判所第一小法廷昭和三二年七月一八日判決(刑集一一巻七号一八六一頁)は、「牽連犯は元来数罪の成立があるのであるが、法律がこれを処断上一罪として取り扱うこととした所以は、その数罪間にその罪質上通例その一方が他方の手段又は結果となるという関係があり、しかも具体的にも犯人がかかる関係においてその数罪を実行したような場合にあつては、これを一罪としてその最も重き罪につき定めた刑をもつて処断すれば、それによつて軽き罪に対する処罰をも充し得るのを通例とするから、犯行目的の単一性をも考慮して、もはや数罪としてこれを処断するの必要なきものと認めたことによるものである。従つて数罪が牽連犯となるためには、犯人が主観的にその一方を他方の手段又は結果の関係において実行したというだけでは足りず、その数罪間にその罪質上通例手段結果の関係が存在すべきものたることを必要とするのである。」と判示している。しかし、右にいう「罪質上通例手段結果の関係がある」かどうかということは、具体的な事例においては必ずしも明確であるとはいい難く、その判断をするについては問題となる数罪の各罪質、害された法益の内容、個数及びその間の従属性の有無などからみて、重い罪につきた刑をもつて処断すれば、それによつて定め他の罪に対する処罰をも充し得るのが通例であるといえるかどうかを総合して検討する必要がある。これを、同一の建物について数個の不実登記がなされた場合についてみると、各登記はその性質上、それぞれが重要な権利義務等に関するものとして独立した意味をもち、公の信用を有するもので、そのそれぞれが独立した保護の必要性をもつものであるから、登記としては前後関係のある数個の不実登記がなされた場合においても、侵害された法益の個数はなされた不実登記の個数と同数であると考えられ、しかもあるものが他に従属的であるとはいえないので、先に挙げた諸点のうち害された法益の個数及びその間の従属性の有無の点において、重い罪につき定めた刑をもつて処すれば、それによつて他の罪に対する処断罰をも充し得るのが通例である場合に当るということはできないこととなる。結局、登記はその法的性格上後の登記は先の登記を前提としてなされるのが普通であるけれども、数個の不実登記が犯罪としてなされた場合の罪数関係を考えるに当つては、判例学説上牽連犯の典型的な事例とされている文書偽造と行使、住居侵入と窃盗などのように、手段とされる文書偽造、住居侵入がそれ自身独立して処罰するに値する価値に乏しく、その法益侵害も従属的な評価に止まり、結果たる重い罪の刑によつて処断すれば足りると評価しうる場合と同列に論ずることはできない。このように考えてくると、同一の建物について前後関係に立つ数個の不実登記がなされた場合に、その数罪間に「罪質上通例手段結果の関係がある」ということはできないから、その数個の不実登記をなした罪は牽連犯ではなく併合罪の関係に立つものと解せざるをえない(なお、不実の所有権保存登記をしたうえで不実の抵当権設定登記をした事案に関する昭和七年四月一一日及び同月二八日の各大審院判決も、右の罪数関係を牽連犯であるとはしていない〈刑集一一巻上三四九頁及び同五一一頁各参照〉。)。そして、表示登記もまた登記簿上の一個の不動産の同一性を明らかにし当該不動産の物理的現況を表示するもので、その後に続く権利に関する登記の対象を明確にするものとして重要な意味をもち、独立した保護法益を有するものであるからこれと保存登記との場合についても別異に解すべき理由はない。

そうすると、本件公訴事実の第一と第二とは併合罪の関係に立つものであり、公訴事実を同一・単一にするものではないので、これらのうちいずれを起訴したか不明である旧起訴は、起訴の対象としようとした事実を他の公訴事実と凶別できる程度に特定していたことにならないので、公訴の提起が不存在と目される程度の重大な瑕疵があつたといわざるをえず、旧起訴によつては、本件公訴事実記載の各事実のいずれについても、公訴時効の進行は停止されなかつたものといわなければならない。

四そして、検察官において、被告人両名のいずれについても他に公訴時効の進行を停止する事由の主張立証がなされないし、被告人両名の当公判廷における各供述によつても、被告人両名のいずれについても他に公訴時効の進行を停止すべき事由があるとは認められない(被告人Iの外国旅行も公訴時効停止の効力があるとはいえない。)ので、本件公訴事実記載の各事実については、本件起訴の日には、いずれも公訴時効が完成していたものと認める。

以上のとおりであるから刑事訴訟法三三七条四号により、被告人両名に対し免訴の言渡をすることとする。

(野間禮二 森岡安廣 中村隆次)

別紙一公訴事実

被告人Iは、イワオ興業株式会社の代表取締役、同Tは同会社取締役、同Aは、萬国通商株式会社の代表取締役であるが、被告人らは昭和四七年一月八日ころ、協栄建設工業株式会社(代表取締役橘田吉平)との間に、同会社を請負者、被告人Tおよび同Aを注文者として、B所有名義の大阪市西成区梅通三丁目八番地の一、同番地の三所在の宅地上に工事代金四、七〇〇万円、右代金完済時に所有権が移転する約定のもとに、鉄筋コンクリート造陸屋根三階建共同住宅・店舗・車庫(延床面積883.6平方メートル)の新築工事請負契約を締結し、同年九月ころには表示登記及び保存登記の可能な程度に右建物が出来上がつたが、右工事代金四、七〇〇万円のうち一、〇〇〇万円しか支払つていないため、協栄建設工業株式会社から右建物の引渡しを受けることができず未だ右建物の所有権を取得していないのに、同社の承諾を受けないで右建物につき、イワオ興業株式会社を所有者とする表示登記および所有権保存登記をしようと企て前記Bと共謀のうえ

第一 同年一〇月六日、同市浪速区戎本町二丁目一番地の一所在大阪法務局今宮出張所において、情を知らない土地家屋調査士兼司法書士正井喜美方事務員八木照邦をして、同所登記官に対し、イワオ興業株式会社が右建物の建築を萬国通商株式会社に発注し、同社において建築工事を完了させてイワオ興業株式会社に引渡した旨記載した萬国通商株式会社代表取締役A作成名義の内容虚偽の建物引渡証明書及び右建物がイワオ興業株式会社の所有であることを証明する旨記載した被告人T及びB両名作成名義の内容虚偽の建物所有権証明書等の関係書類を添えて、右建物の所有者がイワオ興業株式会社である旨虚偽の表示登記申請をなさしめ、よつて右登記官をして右建物の登記簿の原本表題部の所有者欄にその旨不実の記載をさせ、即時これを同所に備付けさせて行使し、

第二 同月一一日、前同所において情を知らぬ前記八木照邦をして同所登記官に対し、右建物の所有者がイワオ興業株式会社である旨虚偽の所有権保存登記申請をなさしめ、よつて右登記官をして同所備付けの不動産登記簿の原本にその旨不実の記載をさせ、即時これを同所に備付けさせて行使し、

たものである。

別紙二公訴事実

被告人Iは、イワオ興業株式会社代表取締役、被告人B、同Tは同社取締役の地位にあるもの、被告人Aは、萬国通商株式会社代表取締役の地位にあるものであるが、共謀の上、被告人T及び日観商事こと被告人Aを注文者、協栄建設工業株式会社(代表取締役橘田吉平)を請負者として、大阪市西成区梅通三丁目八番地三号に建築工事中の鉄筋コンクリート造三階建のマンション(延床面積883.6平方メートル)が工事未完成の上、右協栄建設工業株式会社の所有物件であるのに、同社の承諾のないまま、同建物につき、右イワオ興業株式会社の名義で所有権保存登記を了して、同建物を金借の担保に供しようと企て、昭和四七年一〇月三日ころ、同市浪速区戎本町一丁目七番地、土地家屋調査士、司法書士正井喜美事務所において、情を知らない同所事務員三浦正和らをして、右萬国通商株式会社において同建物を建築した上、右イワオ興業株式会社に引渡した旨被告人A作成名義にかかる建物引渡証明書、被告人B及び同Tにおいて同建物を所有する旨の被告人B、同T作成名義にかかる建物所有権証明書、被告人Tにおいて、同建物をイワオ興業株式会社の所有名義とすることを承諾している旨の同被告人作成名義にかかる上申書等、内容虚偽の登記必要書類一切を作成させたうえ、同月六日同区同町二丁目一番地の一、大阪法務局今宮出張所において、右三浦正和らをして、同出張所係員に対し、右登記必要書類の内容が真実であるもののように装つて、これを同建物についてのイワオ興業株式会社を権利者とする所有権保存登記を求める申請書に添付して提出させ、もつて不正な方法により所有権保存登記を申請し、よつてその旨誤信した同係員をして、不動産登記簿の原本に同建物の所有権が右イワオ興業株式会社に帰属する旨の不実の保存登記をなさしめた上、即時同所にこれを備えつけさせて行使したものである。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例